超解像赤外顕微鏡および超高速赤外分光法の開発

井手口 拓郎

国立大学法人東京大学大学院 理学系研究科附属 フォトンサイエンス研究機構
准教授

井手口 拓郎

※ 所属、役職等は受賞当時のものです

研究概要

マイクロプラスチック(以下、MPs)※1の化学分析は水環境の保全にとって欠かせない。 赤外分光法※2は有用な化学分析手法の一つであるが、MPsの分析へ適用するにあたって、(1) 1 μm以下の粒子を分析できないこと、(2)分析時間が長いことが欠点として知られていた。 同氏は(1)の課題に対して、中赤外フォトサーマル顕微鏡※3と呼ばれる新たな超解像赤外分光顕微鏡を開発した。 従来法では分析対象の粒子径が数μmに限られていたが、本顕微鏡ではより微細な約100 nmの粒子まで分析可能となった。 これにより、人体からの排出が困難とされる1 μm以下のナノプラスチック※4の計測が可能となった。 (2)の課題に対して、同氏はタイムストレッチ赤外分光法※5と呼ばれる毎秒約1億回の計測が可能な世界最高速の赤外分光手法を開発した。 本手法により短時間での大量の化学分析データ収集手法が開発されたことで、水試料中のMPsの大規模データ解析実現への可能性が示された。

1 マイクロプラスチック:環境中に存在する微小なプラスチック粒子。人体・環境への甚大な悪影響が懸念されており、特に海洋環境で懸念材料となっている。
2 赤外分光法: 赤外領域の波長の光を試料に照射し、波長ごとの光吸収等を測定する手法。MPsを構成する分子の構造によって光吸収される波長が異なるため、横軸に波長、縦軸に光吸収量あるいは透過光量をプロットした赤外スペクトルを測定することで、MPsにどのような分子が含まれているかを判別できる。
3 中赤外フォトサーマル顕微鏡: 試料へ中赤外レーザー光を照射し、中赤外光を吸収する分子近傍の温度上昇 による屈折率変化(フォトサーマル効果)を活用する超解像赤外分光顕微鏡。原理的に中赤外光よりも分析領域が微細な可視光でその屈折率の変化を検出することにより微細な分析領域での赤外分光を実現させている。
4 ナノプラスチック: マイクロプラスチックよりもさらに小さく、体内への吸収や環境中での移動が容易で人体や生態系への潜在的な影響が一層懸念されている。
5 タイムストレッチ赤外分光法: 様々な波長の光から成る超短パルスレーザー光を試料に照射後、波長ごとの透過光の強度情報(スペクトル)をパルス光強度の時間波形に変換して取得する赤外分光手法。1つの光パルス照射で1回の赤外分光測定が可能となるため、毎秒約1億回光パルスを出力するレーザーと応答速度の速い検出器を用いることで、毎秒約1億回の計測が可能となる。
1 マイクロプラスチック:環境中に存在する微小なプラスチック粒子。人体・環境への甚大な悪影響が懸念されており、特に海洋環境で懸念材料となっている。
2 赤外分光法: 赤外領域の波長の光を試料に照射し、波長ごとの光吸収等を測定する手法。MPsを構成する分子の構造によって光吸収される波長が異なるため、横軸に波長、縦軸に光吸収量あるいは透過光量をプロットした赤外スペクトルを測定することで、MPsにどのような分子が含まれているかを判別できる。
3 中赤外フォトサーマル顕微鏡: 試料へ中赤外レーザー光を照射し、中赤外光を吸収する分子近傍の温度上昇 による屈折率変化(フォトサーマル効果)を活用する超解像赤外分光顕微鏡。原理的に中赤外光よりも分析領域が微細な可視光でその屈折率の変化を検出することにより微細な分析領域での赤外分光を実現させている。
4 ナノプラスチック: マイクロプラスチックよりもさらに小さく、体内への吸収や環境中での移動が容易で人体や生態系への潜在的な影響が一層懸念されている。
5 タイムストレッチ赤外分光法: 様々な波長の光から成る超短パルスレーザー光を試料に照射後、波長ごとの透過光の強度情報(スペクトル)をパルス光強度の時間波形に変換して取得する赤外分光手法。1つの光パルス照射で1回の赤外分光測定が可能となるため、毎秒約1億回光パルスを出力するレーザーと応答速度の速い検出器を用いることで、毎秒約1億回の計測が可能となる。

研究内容紹介動画