
2023堀場雅夫賞 趣意書
<2023 募集テーマ>
次世代半導体デバイスの開発に貢献する分析・計測技術
昨今のデジタル化の波は、IT企業だけでなく、製造業、モビリティ、サービス業、農業および医療など、全ての産業、社会経済システムに変革をもたらしています。デジタル化の拡大により、データ処理量は右肩上がりで増加を続けており、ICT関連機器に使用されている半導体デバイスの高性能化を進めることが欠かせません。化合物半導体は、シリコンよりも電子の移動速度がはるかに速く、高速信号処理や低電圧での動作が可能であることに加え、光への反応やマイクロ波を発生させるなどの優れた特性を備えていることから、デジタル化を支える半導体デバイスのキーマテリアルとして日常生活に広く使われるまでに成長しています。
パワー半導体は、自動車、産業機器、電力、鉄道および家電など、生活に関わるさまざまな電気機器の制御に使用されており、カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネに向けた技術革新がますます期待されます。一方、デバイスの高速化、省電力化のためには、革新的な電送技術の確立も重要となり、光と電気を融合して情報通信処理を行う光エレクトロニクス技術の確立が急がれ、さらには、Beyond 5G/6Gのオール光時代を見据えた光エレクトロニクスデバイス、光電融合プロセッサの開発も重要となります。加えて、量子コンピューターの実現のために超電導やイオントラップ、光などの現象へのさらなる理解が必要で、そこでも新たな分析・計測技術が求められています。
半導体デバイスは、原材料から加工プロセス、製造プロセスおよび実装プロセスなど、多種多様な技術のうえに成り立っており、基礎研究のレベルから試作や生産プロセスまで全ての過程において、分析・計測技術は必要不可欠なものとなっています。特にパワーデバイスや光デバイス、量子デバイスなどの革新的なデバイスの実用化においては、未知の現象の理解や試作・製造における制御ポイントを見出すことが重要で、そのためにも分析・計測技術がますます重要となります。
2023堀場雅夫賞では、これらの課題を解決し、次世代デバイスを世の中に提供するために必要な先端分析・計測技術を募集対象とします。このような分析・計測技術開発に取り組み、その成果をシステムの自律化、モビリティの革新および健康医療のためのウェアラブルデバイス実現など、次世代デバイスのユースケースやアプリケーションへつなげていくことを目指す研究者の皆様からの応募をお待ちしています。
2023堀場雅夫賞実行委員長
株式会社 堀場製作所
代表取締役社長
足立 正之