潜在的発光酵素機能を利用したタンパク質分析技術の開発

西原 諒

国立研究開発法人産業技術総合研究所 健康医工学研究部門
主任研究員

西原 諒

※ 所属、役職等は受賞当時のものです

研究概要

タンパク質は、その量や構造の変化を測定することで、疾患や感染の有無を把握できる重要な生体分子であり、多くの測定法が開発されている。しかし、従来の手法は操作が煩雑であることが多く、高度な技術や長時間の測定を必要とする課題があった。西原氏は、新型コロナウイルス由来のスパイクタンパク質※1が、ウミホタル由来の発光物質「ルシフェリン※2」を発光させる現象を発見した。通常、ルシフェリンは「ルシフェラーゼ」と呼ばれる発光酵素の触媒作用で発光するが、スパイクタンパク質がその代替となって発光を促す。この現象を応用し、ウミホタルのルシフェリンをヒト唾液と混合するだけで、唾液中のスパイクタンパク質の量を1分で検出できる、簡便かつ迅速なタンパク質分析技術を開発した。さらに、ルシフェリンの化学構造を人工的に改変することで、ウイルス由来タンパク質に限らず、ヒト由来タンパク質の検出や抗体医薬品の品質評価にも展開できることを実証した。今後、汎用性の高い新しいタンパク質分析技術として、医療・創薬分野での幅広い応用が期待される。

1 スパイクタンパク質: ウイルス表面に存在するとげ状のタンパク質。ウイルスの体内への侵入を引き起こす要因となる。
2 ルシフェリン: 発光酵素ルシフェラーゼの基質となる物質の総称で、酸化によって発光する。 蛍の発光に関与するホタルルシフェリンなども含まれる。
1 スパイクタンパク質: ウイルス表面に存在するとげ状のタンパク質。ウイルスの体内への侵入を引き起こす要因となる。
2 ルシフェリン: 発光酵素ルシフェラーゼの基質となる物質の総称で、酸化によって発光する。 蛍の発光に関与するホタルルシフェリンなども含まれる。