圧力で探る生体膜と膜タンパク質のダイナミクス研究
独立行政法人 海洋研究開発機構 極限環境生物圏研究センター
※ 所属、役職等は受賞当時のものです
論文要旨
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深海では非常に高い圧力のため,普通の生物はとても生きていくことができない。ところが,好んで深海に棲む生物もいる。筆者らはその仕組みの解明のため,“圧力生理学”を提唱している。本稿では圧力が生物の機能に及ぼす影響の一例として,高圧で培養した出芽酵母で明らかになったトリプトファン輸送のダイナミクスについて解説する。
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研究概要
数百気圧もの高圧力は細胞にどのような影響を及ぼすのかについて、酵母菌をモデルに「圧力生理学」という新たな着想から研究を行った。
その結果、生命維持において重要なトリプトファン輸送の特殊性を、圧力研究の観点から世界で初めて体系化した。
また、生化学と物理計測の融合を図り、細胞膜上に存在するアミノ酸輸送体の動態を体積変化として定量することに初めて成功した。
さらに生体膜構造については蛍光異方性プローブを用いた蛍光寿命測定を実施し、ナノ秒レンジのダイナミックな動きをとらえた。
今後、顕微鏡下で蛍光寿命測定を実現する新システムを実現することで、医学・基礎生物学への貢献が大いに期待される。