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新しい高感度非線形レーザー分光法の開発と界面分子構造研究への応用

山口 祥一氏

独立行政法人 理化学研究所

山口 祥一氏

※ 所属、役職等は受賞当時のものです

論文要旨

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液体の表面を分光分析するための新しい方法,ヘテロダイン検出(HD-)和周波発生(SFG)分光法を開発した。このHDSFGは,従来のSFGとは比較にならないほど質の高いデータを提供することができる。まず,表面の分子種の濃度に比例するデータを直接与えることによって,これまでは不可能だった定量的な分光分析を液体表面に対して初めて可能にした。また,表面の分子の“上下”の配向を,データの値の正負の符号で非常に明快に示すことができる。今後,HD-SFGは液体表面の分光分析の標準的方法になると期待される。

Heterodyne-Detected Sum Frequency Generation(HD-SFG)spectroscopy has been newly developed for spectroscopic analyses of liquid surfaces. HD-SFG can provide very high quality data that cannot be given by existing SFG. HD-SFG allows one for the first time to perform quantitative analyses of liquid surfaces by directly providing spectroscopic data proportional to the density of surface molecules. HD-SFG can also indicate "up" versus "down" alignment of surface molecules very clearly by the sign of data. It is expected that HD-SFG will become a standard method for spectroscopic analyses of liquid surfaces.

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研究概要

山口氏は、超短パルスレーザー技術を駆使して、界面*1だけを選択的に、かつ高感度に観察できる非線形レーザー分光法を開発した。

開発した手法により、従来ではまったく考えられなかったような質や情報をもつ界面電子スペクトルの取得に世界で初めて成功した。

この測定法により、界面分子の電子状態、振動状態、およびその時間的変化を、自由自在に評価できるようになった。

今後、本手法は、電池内や細胞表面で起こる化学反応の理解など、様々な界面科学分野に応用されることが期待される。

*1 界面: 水と油のように異なる物質が混ざらず、かつ触れ合って存在している場合、両者の境界を界面と呼ぶ。厚さにして100万分の1ミリ程度という界面での化学反応の理解は、生命現象の解明や、種々の材料開発に重要なものとなっている。これまでは、その界面だけを選択的に測定する有効な手法は確立されていなかった。