表面増強ラマン散乱の電磁増強機構の実証と生細胞表面タンパク質の単分子リアルタイム検出への応用

伊藤 民武氏

独立行政法人 産業技術総合研究所

伊藤 民武氏

※ 所属、役職等は受賞当時のものです

論文要旨

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細胞内や表面の多様な分子をリアルタイムで単分子分析するには,高感度でかつ分子識別能が高い手法が要求される。ラマン散乱分光では分子官能基の微細構造を反映したスペクトルが得られるため高い分子識別能を有する。しかし,感度が低いという問題がある。表面増強ラマン散乱(Surface Enhanced Raman Scattering:SERS)では,金や銀のナノ粒子に吸着した単分子のラマン散乱が計測できるためこの感度の問題を解決できる。SERSの問題点として,その機構が不確かなため,実用化への開発指標が得られないことが挙げられる。そこで本研究では,SERS機構の解明と細胞表面SERSリアルタイム分析への応用を行った結果を述べる。

Real-time analysis of bio-molecules of living cells requires sensitivity and high molecular discrimination ability for the methodology. Raman spectroscopy provides vibrational spectra reflecting detailed molecular structures. Thus Raman spectroscopy satisfies the high discrimination ability. However, a problem of Raman spectroscopy is its low sensitivity. Research of Surface Enhanced Raman Scattering (SERS) has been carried out to resolve the problem. SERS occurs to the molecules on Au and Ag nanoparticle (NP) surfaces. Enhancement of SERS enables us single molecule detections. The important issue of SERS is unclearness of its enhancement mechanism. The unclearness prevents us from development of practical applications of SERS. Thus, in the present studies I carried out (1) Clarification of SERS mechanism and (2) Demonstration of application of SERS to real-time analysis of bio-molecules on living cells.

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研究概要

伊藤氏は、表面増強ラマン散乱(SERS*1)の発現機構を解明するとともに、SERSを利用した新しい単一ナノ粒子凝集体顕微分光法を開発した。

さらに、SERSの分子識別能の高さを活かし、表面タンパク質1分子*2のリアルタイム検出に初めて成功した。

この方法により大腸菌・ピロリ菌などを特徴づける表面タンパク質分子を検出することで、従来数日かかっていた培養などの手間をかけずに、それらの細菌の有無をリアルタイム検出できる可能性がある。

さらに、この研究は、その他の生体組織の高感度検出法や、生細胞中の生体関連物質分子のリアルタイム分析手法への応用も期待できる。

*1  SERS: 銀などの金属ナノ粒子が介在することにより、本来微弱なラマン散乱光が劇的に増幅される現象。非常に高感度のラマンスペクトルが得られ、スペクトルに基づく物質の定性に有用な手法として知られる。しかし、本研究までは、この現象の詳細な原理は明らかにされていなかった。
*2 表面タンパク質分子: 生体組織や細菌の細胞表面に存在するタンパク質分子は、細胞内外の物質輸送など非常に重要な機能を担っている。表面タンパク質分子は組織や細菌ごとに異なっており、それを識別することで細胞を特定できる可能性がある。

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