電子を用いた新しい水計測法の開発とその応用

由井 宏治氏

東京理科大学 理学部第一部化学科

教授 由井 宏治氏

※ 所属、役職等は受賞当時のものです

論文要旨

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水溶液中で作動する電極・触媒表面や細胞内小器官の間隙,酵素の反応ポケットといった界面・ナノ空間に存在する水の微視的構造環境を計測できる技術への要望が高まりつつある。そのような局所空間の水は絶対量が少ないだけでなく,埋もれた環境に存在するため,その計測技術には高感度性だけでなく測定空間選択性も要求される。本研究はラマン散乱分光法をベースとし,電子を信号増強プローブとした新しい水の局所構造分析法を提案するものである。ラマン散乱スペクトルは水の微視的構造環境変化を鋭敏に反映するため,電子を目的計測部位に選択的に生成する技術と組み合わせることができれば,新しい水計測法の開発につながると期待できる。

New analytical tools that enable the measurements on water in nanometer-sized interfacial and confined nanospaces have been required. Water in such restricted nanospaces plays important roles for chemical processes at the surfaces of electrodes and catalysts, in nanospaces between intracellular organelles, and in reaction pockets of enzymes. However, such analytical tools have to meet the requirements both high-sensitivity and site-specificity, because the total amount of water in such nanospaces is extremely small and it is generally buried in surrounding aqueous solutions. Here we developed a new Raman spectroscopic technique based on a signal enhancement utilizing transiently generated electrons. Since Raman spectra sensitively reflect local water structures, it can be expected that the electron-enhanced Raman technique will provide a new tool to measure water in restricted environments when it is combined with site-selective electron-injecting methods.

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研究概要

ラマン分光法は、試料にレーザ光を照射して分子の構造を調べる分析手法であり、多くの分野で使用されている。

しかし、得られる信号強度が極めて微弱なため、産業的な水計測への応用は難しかった。

由井氏は、強いレーザパルス光を水溶液に照射し、放出された電子の作用でラマン散乱強度が過渡的に最大10万倍まで増強される「電子増強ラマン散乱」を発見した。

さらに、この電子増強ラマン散乱を利用して、発光などの妨害に強く一度きりの励起でラマンスペクトルを計測できる新しい方法を開拓した。

この手法は、水溶液の表面や超臨界水など、特殊な条件における水の構造解析・状態計測に応用可能である。

今後、半導体製造現場の洗浄水、発電所の冷却水、環境中の流水など、さまざまなオンライン水計測への展開が期待される。

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